やけに長く停まっているなと思い音楽を止めれば人身事故の影響で折り返し運転を始めるというアナウンスが響くメトロを急いで降り、短い、長いエスカレーターを乗り継いで地上へと顔を出した。斜め向かいにあるJRへと再び流れ出す音楽とともに改札を越えて滑り込む。軽い駆け足で乗り込んだもののしばらく走り出さない車体の中でしらけた空気を無言で分かつ乗客たちはその大部分が秋葉原で降りていく。乗り換えはやけにスムーズで、上野をこえ日暮里へ。南口を出て谷中霊園沿いの仮設階段を上ると、右手に見下ろす工事の照明が左手に続くフェンスを越えてその奥の鬱蒼とした墓地へと弱々しく差し込んでいる。その水平な光の幕を遮りながら進み階段の降り口へと至る数歩手前、それまで続いていたフェンスが途切れぽっかりと開く墓地への門にあやうく吸い込まれそうになり、あれはまるで誘導されたみたいだと思いながら結局はスタスタと石段を降りていく。夕焼けだんだんへと続く道半ばまで入り込み停止しようとするワゴンを追い越すと、猫達にエサをあげている人がいてその足下には2匹の野良、道を挟んだ斜め向かいにもまた2匹おり、その裏には完成間近のマンションが夕焼けだんだんへと迫り出すように聳えていて、随分とあの辺りの風景を変えてしまっていた。どんな人達が住むかは分からないけれど、あのマンションのベランダからベランダへと猫達が自由に、そして立体的に行き交う景色が見れたら良いななんて思う。