日高敏隆『春の数えかた』、ロバート・A・ハインライン夏への扉』読了。
『春の数えかた』は日高敏隆の軽快な語り口に乗った弾むような言葉が心地よく、その中に著者が日常の中で発見する(若しくは、振り返る)小さな発見や小さな疑問が粒立ち良く収められている。存在感も控えめでさりげない本だけれど、最近はこういう本こそ手元に置いとくべきだと思うのはなんでだろう。
夏への扉』は名作として語られるSFの一つ。新たなアイデアの奇抜さは無く、それよりも既存のアイデアとストーリーの編集の巧みさに嘆息する、というような作品。タイトルにもなっている“夏への扉”のような言葉回しの妙も随所に見られて、こちらも読んでいて純粋に楽しかった。小さい頃SFを読んでいた時のあの感覚が蘇るよう、と言ったら随分と感傷的だけど、イーガンのようなものばかり求めるんじゃなく、時にはこういうのも良いなっていうそんな感じ。まえがきにどんな難しいこと書くのかと思ったら
“世のなべての猫好きにこの本を捧げる”
なんて書いてあって、そこからまずほのぼのする。

春の数えかた (新潮文庫)

春の数えかた (新潮文庫)

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))