無限記憶

ロバート・チャールズ・ウィルソン『時間封鎖』(原題『SPIN』)の続編『無限記憶』(原題『AXIS』)読了。『時間封鎖』の中では二つの異なる時間軸のプロットといくつかの特徴的な関係性がそれぞれに読みどころを提供していたのに対し、こちらは単一軸での展開で物語が進行し、さらに全体としての抽象性を高めていて読みながらどこに重点を置くべきかちょっと良く分からないことになっている(というか、重点がほぼない)。全3部作の中での2作目となる本作は率直に言うと“中だるみ”な感じ。400頁超の長編とまでせずともどうにかなっただろうなんて愚痴をこぼしたくなる。
『時間封鎖』で登場した“仮定体”という存在へ迫りながら、それも結局はこちらの想像を超えない域で留まり、仮定体の超越性を延々と表現し続けることで収束点を先送りし続ける。その表現自体に例えばスタニスワフ・レムのそれのような超越性が伴えばまだ良かったのだけれど、それも中途半端だと思えるのは、本書を読んでいてもそれが何か現代性への批評であったり、人間の万能性への懐疑・批判といった視点を持ちえていないように感じられるから、作者の切実な目的意識だったり問題意識というようなものがこちらには伝わらない点にある。『時間封鎖』でも『無限記憶』でも判断を保留し続ける“神”的存在への賛意を表明する結末が、完結編となる3作目では待っていそうな気がして、気が滅入る。ともあれその3作目『VORTEX』が出版されたなら読むけどさ。

無限記憶 (創元SF文庫)

無限記憶 (創元SF文庫)