上田義彦のマニエリスム博物誌

ダチョウの卵

東京大学コレクション――写真家上田義彦マニエリスム博物誌』@東京大学総合研究博物館。ここでのマニエリスムとは何さってな話を連れとしていたら、なんだか僕も連れもはっきりとした定義を持ててないことに気付いたような気付いてないような。まあその時の話はどうあれ、僕にとってのマニエリスムは本来の機能をずらして再配置するようなイメージがある。どうだろう。
展示は、良かった。写真は、光沢を落とした写真表面の鈍い艶がその紙としての質感とともにそこに捉えられた被写体表面のざらつきを喚起させると同時に、その両者を等質化してあらゆる背景へと同化させるようなそんな存在感を放つ。標本であると見ればしかしそのどこにも焦点を合わせられずもどかしさを感じ続けるしかないような周到に入り組んだ写真、と言ったら大げさだしそもそも標本であると見るかにも議論はあるだろうけどまあそんな感じ。
読みかけたまま結局放置してるんだけど、多木浩二『写真の誘惑』で扱われるメープルソープの自写との類似が見て取れる気がして“死”へと意識が向く。死者にまた死を与えるような写真はそれだけで何か強い。
図録がかなり格好良かったのだけど12,600円と高くて即断念。
そしてほんとうは駄目なんだろうけど展示風景をパシャパシャ。ごめんなさい。写真はアクリル(ガラス?)に写りこむtさん。絶妙な角度で卵が透けてるよう。