OM-2『作品No.5』@神楽坂die platze

行けた行けた、OM-2『作品No.5』。半端な雨の中赤城神社の脇を下りdie platzeへ。
会場は段状の客席以外にも壁に沿って椅子が並べられ外周を形作る。それらに囲まれた中央、またも*1巨大なポリ袋が内部に倒れる女を起点に直立している。やがてそのポリ袋ごと小さな会場を歩き転げる女はその手に持つペンで袋の内皮に真っ赤な線を乱暴に残していく。そして静かな狂気を湛えながら袋を徐々に破き、転げることでその肢体に絡まり繭のようになったポリエステルの層に挑むような必死さで外へと這い出してくる。抜け殻のようにクシャクシャと横たわるその繭の残骸を女は次に自らのスカート(ワンピース)の中へと丸めて押し込み、歪む表情に幾度とない嗚咽を添えて不器用に会場内を行き来していた。それらの光景は内省行為の表象のように見え、例えば個を取り囲む様々なモノ達によって外的に定義づけられるその“個”性(アイデンティティ、みたいな)を排除した先の、より確かな“個”性を見出し世界に臨もうとする意志と苦しみの表象であるかのよう。その後、そうして剥き出しの自分を晒して世界に臨む者らの往来とも思える風景と、会場内に幾重にも映し出されるメッセージが作る幻のような場面が過ぎ、次に会場中央に現れたのは最初の女とは正反対とも思える男。ゴミ袋を漁りポップコーンの袋を頭に被りまたそれを会場にばら撒き、ペットボトルのお茶を床にこぼしその水分で煙草の火を消し安いダッチワイフを体に巻いたその後カッターナイフを突きたて破り、やがてゴミの中へ倒れこむ男。それは例えば、酷く浅い自我をどこまでも引きずってどうしようもなく外的な自己(個)に埋没し世界と繋がる鎖を失っていく人間のように見えた。最後に男がつぶやいていた「しんだきみといきていきたい」なんてまさに。
とまあ、僕があの舞台を観て何かを語るとすればこんなとこ。相変わらずのカオスな舞台で凄く楽しかった。前回の『ハムレットマシーン』に比べれば縮小されたその破壊性は規模を考えれば仕方ない。

*1:07年のハムレットマシーンの時も、大きなポリ袋の中で喚き、消火器(から消化剤)を撒き散らし、をやがて破り出る男がいた。