其の二

開く葉のその前、落ちた花のその後のちょっと寒々しく味わい深い桜の枝に覆われた空の下、花見という名の宴会が催された土曜日。頼ることも頼らないことも許される緩やかで心地よい人の繋がりを表すブルーシートの上でプラスチックカップに浮かぶ淡い黄色の東一を味わう。や、あまり味わえてないけどね、これ美味いよと言われる声で改めてそう美味いのだと自らに刷り込むようにして味わっていた。表参道ヒルズには四合瓶しかなかったから東一に加えて醸し人九平次も差し入れたんだけど、あれは手の届かないブルーシートの対角線上で綺麗に消費され、味わうことは出来なかったけどそれはそれで嬉しかったりする。代々木公園の空には色々なものが飛び交っていた。バドミントンの羽に始まり硬球やバレーボール、フリスビーにビーチボール、ジャグリングのあらゆる小道具や、弾丸のようにぶれることなく飛んではそこをめがけて伸びるように手に収まるラグビーボール。京都の鴨川で行われたという同じように穏やかで馬鹿馬鹿しくどうにも楽しい花見を思い出す新参の女性が何度となく口にした「楽しいわあ」という言葉に酷く共感しながら、どこからか登場したJINROを飲まされて沈没。