ぬるりと続く日々に久々の鋭さを与える瞬間を取り逃すまいと向かう六本木。日曜昼、AXIS GALLERYでの『eating + design デザインにできること2』展でマライエ・フォーゲルサングの展示を観る。例えば“色”や“思い出”などの心理的側面から、木の実を摘むようにして食べる、またはプロファイルを隠した人と人との素の対面という“体験”までをデザインするマライエのイーティング・デザインは面白くて仕様がない。彼女の今までのプロジェクトが一通りプロジェクターで流されていたけれど、それらが収められるだろう今年08年の12月に出版されるというマライエの本『EAT LOVE』は、即座に手に入るのならば、必ず手に入れよう。日本でも、未だあまり一般的でない領域で“食”を軸にしたデザインは行われている(だろう)し、それが一般化する一つの下支えとして、意味ある本だろうと思う。例えば(もう昔の話だけれど、個人的な繋がりから言えば)とうに解散してしまったautomeal.のようなアーティストの隆盛を願って。
その後21_21で『Second Nature』展。東信の「式2」が目当てと言えば目当てだったが、吉岡徳仁インスタレーション「CLOUDS」と、結晶の椅子「VENUS」の美しさに息を呑む。人を前提としないプロダクト・デザインという矛盾こそが、例えばセカンドネイチャー、第2の自然であり、“人工”の自然である、そこに見る“美”とは何か?“僕ら”がいない世界で、しかと存在し続け、独特の存在感を誇りながら寂れていく何物かを想像するとき、それこそを美しいと思う人間の矛盾した思考(嗜好?)を象徴するようにして、液体中に黙々とその結晶を募らせる立体の存在が、人しかいないこの世界での“デザイン”を逆にエンパワーするようでいて、切ないほどに力強かった。

で、その後会社へ。現実はすぐそこにあるよ。