劇団、本谷有希子

ちょっとだけこないだの「劇団、本谷有希子」について書く。あれはちょっとずつ人と人の関係性が崩れている世界の物語。
例えば、夫に逃げられ、次いでそのオルタナティブであった息子に逃げられ、結局は夫の好きだった鳥を偏執的に愛する老婆。
例えば、自己犠牲的努力の対価としてただ褒められることのみを求める女。
例えば、狂った夫の愛を求めた末に、超利己的な人生観を悟るに至った女。
例えば、どんな男であれ愛し受け入れる女。
例えば、老齢の義父を愛し思いつめ、追い詰める女。
というような与条件の物語。それぞれに愛の位相がずれている。や、愛というか、そういった関係の構築以前の何かがずれている。それぞれの人の周囲への欲求のあり方が偏っていて、あらゆる手段が目的化した人達のぐだぐだの生活が描かれいた。その中で唯一正常に見えた一人の少女は、しかしその狭いコミュニティの中では正常に見えるけれど、だからこそ最も偏った人物でもあった。
というようなことをまずはきっかけとして何か考えたいと思っていたのだけど、なんだか難しそうなのでとりあえずここまでメモしておく。
例えばあの舞台にいた6人の女性は全部で1人なんじゃないか、とか考え方はいろいろあるなあと思いつつ、今まとめられる気がしない。
舞台を観るまでは一つの経験として義務的に「劇団、本谷有希子」を観ておこうという意識だったのだけど、今は次回公演も必ず観ようという気分に変わっている。次回公演では何か紐解ける言葉を見つけたい。