ザ・なつやすみバンド

まだ夏ではないけれど、空気の底を感じるような重い熱気は漂いはじめている。夏の終わりの涼しく抜ける風を、もう恋しく感じたりする。

  • ザ・なつやすみバンド - 夏休み(終)


フォーキーだけれど、例えばスティールパンや笛やバイオリンの音が適度に配分された哀愁漂うその音は、懐かしいけれどもちょっとだけ新しいポップスへと曲全体を引き上げている。インディーズから発せられながらも(という枕詞は本来おかしいけれども)、そのメロディーは凄く普遍的に感じられて、初めて聴いた時は結構驚いた。曲の短さが、漂わせる哀愁と相まって後ろ髪を引き続けるようで、つい繰り返し聴いてしまう。このライブ映像も良いけれど、映像なしのスタジオ音源で聴いた方がしみじみできるかもしれない。

TNB!

TNB!

夏めくとある晩に、会社の御大とも呼べるCDを含めた小さな飲み。新たなコンペに向けた志を共有すべく、無闇にはじけるでもなく、手探りな核心を狙い撃つでもなく、丁寧に迂回を続けながら徐々にその半径を狭めていくように飲む。CDを囲む僕らの心中に、その顔色を窺うような側面もなかったわけではないだろうけれど、それよりもこれまでの豊かな経験値をかけて臨むというその意気込みへの期待が、適度に場の重力を増して地を踏みしめるように作用したというか。
そうして(あまり表には出さずとも)期待に胸躍る一方、どうにも窮屈な冷静さが抜けなかったのは、普段あまり着ることのないスーツに身を包んでいたからだろうか。どれだけ暑くてもスーツの上着は脱ぎたくないからなあ。

今日は一曲だけ。80'sを現代に昇華させたような曲てことで。

  • Ice Choir『Afar』

The Pains Of Being Pure At Heartのドラマーによるプロジェクトと言ったら分かる人には分かるかもしれないが、ともあれそのThe Pains〜でも見せた80's感の方向性をちょっといじってエレ・ポップ路線に寄せたと言えば良いだろうか。個人的には、現代版に洗練されたGangwayだと思っているけれど、伝わる人いるかな。

VORTEX/連環宇宙

ロバート・チャールズ・ウィルスンによる『連環宇宙』(原題:VORTEX)。『時間封鎖』『無限記憶』の前2作に続く3部作の完結編。そこでは、大きく2つの時間が交互に進んでいく。一つは、2作目となった『無限記憶/AXIS』から1万年後の世界で再び目を覚ます(再生される)ことになった男性と、その世界に生まれ落ちながら過去の他人格を外挿されたことで揺れ動く自己を抱える女性との間の物語。そしてもう一つはそれよりもずっと前(1万年前)の世界で、とある少年を保護することになる警察官と精神科医の男女の物語。この2つの時間は、結局はごく小さな接点しか持たないまま進んでいくが、その小ささこそがこの3部作完結の仕掛けの大きさを物語る。それを語る野暮はさておくとして、ここではアイデンティティに関わる疑問が多く出てくる。再生された自己、外挿された自己、ある一定の感性を外的にコントロールされた自己、そして精神鑑定により他者をコントロールすることへの疑問、さらに他にも様々…といったように。そのそれぞれにおいて人間性とは?という疑いを投げかけつつも、その総体としての“なにか人間性的なもの”、が、3部作を通して出てくる“仮定体という未知の存在”への対比としてより際立つように配置されながら、結果、その仮定体という存在すら軽く飛び越える物語終盤の構成によって、読者はいかにもSF的な興奮の中で一定の満足を味わわされることになる。
とはいえ、なにかモヤッとしたものが残る。それは、その構成の中で、新たな概念の提示や、人間性(人間に関する認識)の枠組みを突き崩し、新たに再構築してくれるような気付きがほぼ無いということにも関連しているのかもしれない。人間性への疑いを投げかけるような設定の数々も、結局は人の生(なま)の連帯といった所に落ち着くこの物語はひどく現状肯定的な未来世界を描いていて、どうしてもそこへのモヤモヤが晴れない。既存の知の(あまりに)巧みな再編集を見せられた気分をどう扱ったものか戸惑ってしまう。
とはいえ(←2度目)、前作に比べればその仕掛けの数々は目を見張るレベルだし、タイトルとなる連環宇宙の意味がしっかりと反映された物語の完成度は素晴らしいと思う。なにかが足りないとしたら、それは何なのか、多分読む人がそれぞれに考えれば良い。僕にとっては、未知の外部、ということになるかなあ。

連環宇宙 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

連環宇宙 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

こないだのエントリで、自分を先回りして誘導と書きつつも、やはりある程度の量を一挙にまとめたいと思い続けると時間ばかりが過ぎてなかなか更新に辿り着かない。だからその時気になる曲やアルバムをちょっとずつ、小分けに置いていこうかと。

  • Linus' Blanket『Show Me Love』

01年結成の韓国のネオアコバンドLinus' Blanketの初のフルアルバム。結成からフルアルバム制作までに約10年の月日があるなかで、制作にあたっては過去曲も全曲録り直しを行ったとのこと。そんな経緯もあり、瑞々しい曲の数々をクオリティ高く聴くことが出来る。アルバム全編アコースティックな音の透明感に満ちているけれど、ここではその中でただ一曲だけエレクトロニカなこの曲を。

ショウ・ミー・ラブ

ショウ・ミー・ラブ

  • Oliver Koletzki & Fran『Lovestoned』

ベルリンのテックハウス系レーベルを主宰し、自らもアーティストとして多くのリリースをしてきたOliver Koletzkiによる10年作。レーベル全体の方向性やOliver自身の以前作にくらべ比較的ポップで、テクノ/ハウス色も抑えられた耳馴染みの良いアルバムになっている。タイトル曲となるこれ↓は、唸るベースもやけにファンキーなエレクトロニカといった調子で、ブラックミュージック好きにもアピールするんじゃないか。

Lovestoned

Lovestoned

風邪とSF

体が丈夫だとか健康だとか、どちらかといえばそういう所とは真逆に見られることが多いのだけれど、でもこの数年は風邪もひかずいたって健康に過ごしてきた。だから三日前から続く風邪はホントに久しぶりで、対処の仕方を忘れている。当初は、寒気や関節の痛みといった、普段は現れることのない身体内部からの情報を手がかりに空想解剖学的な一人遊びでもしようかしらんなんてユルユルと捉えていたら、いずれ寒気は強烈に感覚を覆ってしまい、そこでもう色々諦める。ベッドで横になる間とあるSFを読んでいて、そのクライマックスとなる章の盛り上げ方に若干興奮しつつも、読み終えてからの夢見の悪さったらなかった。風邪による浅い眠りの中で、空間/時間のスケールや最後には次元のスケールまで大胆に接続し跳躍してみせたSFのその各所が、脳内で本来のストーリーを逃れて脈絡なくカットアップ&リミックスされていく。それは疲れた脳と身体にはあまりにノイジーな夢で、午前5時に目が覚めた。
至って正統派で難解さも程々といったSFの思わぬ副作用に驚かされると同時に、風邪じゃなかったら飛躍がまた新たな飛躍を生むようなダイナミックな夢が見れただろうにっていう点が残念で。
薬も飲んで今はもうだいぶ回復。ただ今度は咳が出る。うーん。

風邪かなー悪寒に不安がつのる。
あと、ここに載せたい音楽(洋楽まわりで)がたくさん。結構時間かかるんだよねまとめるの。てのでまだ手付けずも、こうしてこれをここに書くことで僕自身の行動を先回りして誘導する。